1. 札差とは……(A. 札差とは何ぞや)

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1. 札差とは……(A. 札差とは何ぞや)


テレビや映画に登場する札差は、どうにも分が悪い高利貸商人といった役回りが普通です。
 
確かにそうした面も否定できませんが、ここではあくまで客観的に、札差が蔵前を舞台に商いに成功した理由とその背景について、過去の成果を筆者なりに整理してみたいと思います。
まず札差についてなるべく短くまとめてみたのが次の文章です。
 

 
札差とは
札差とは、旗本・御家人のうちの蔵米取の代理人として、浅草蔵前の御蔵から年3回に分けて支給される俸禄米を受け取り、これを米問屋に売り払いその手数料を得ることを本業とする商人のことです。
しかし彼ら(札差=蔵宿)はいつしかその蔵米を担保として札旦那(旗本・御家人)に金銀を融通し相当の利息を取り、ついに幕府の許可を得て札差株仲間を結成します。
当初わずか109人でその権利を独占し、果ては財政難で窮地に陥った武士たちを尻目に豪勢な生活を営むに至った、武士御用達の金融機関でした。

幕末の浅草蔵前の図幕末の浅草蔵前(クリックで拡大) 

 
上記の文中にある浅草蔵前の幕末の姿が左の図で、かつて札差だった和泉屋多七(細谷氏)が作成したものです。
 
全国各地の幕府の領地から送られてきた37万石にも及ぶ年貢米が、御蔵奉行や札差の手を経て市中に渡るまでの様子をこの蔵前で一貫して見ることができます。
 
ところで、飯米1石を金1両とした時の札差の扱い高37万両は、1年間の幕府の経費150万両の4分の1に及ぶ計算になります。勿論それも大変な数字ですが、それ以上に驚かされるのは、将軍直属の家臣である旗本・御家人のうち約2万人を数える蔵米取の金銭の出入りを、100人ほどの札差が独占して取り扱っていたことでしょう。
 
札差たちは、そうして得た経済力によって、この浅草蔵前に店を構え大富豪として江戸の町を闊歩していたのでした。